いつもの夢だ。










全部、取り返しのつかないこと。

俺が思っている以上に世界は広いし、

俺が思っているよりも味方は少ない。







君と出会ってから 俺の気持ちは、元に戻らない方向へいってしまった。










訊きたいことはあったけど、怖くて出来なかった。








































どうしてこうも、君は……















明日になっても、明後日になっても、彼が目を覚ますことはなかった。

俺はというと、逆に眠れない夜が続いた。

あの悪夢を見るよりは幾分かマシだと言い聞かせながら……。













去年からずっと……













俺には何も無い。

自信も、勇気も、覚悟も、何もかも。

出来ない。こわくてたまらないんだ。

嫌がるんじゃないか、さけられるんじゃないか、嫌なことばかり考えて……













なんだよ悪魔って!













ああ……胸糞悪い。







俺はなんて最低な人間なんだ。













海藤こそ何をしたっていうんだよ?

彼は何も悪くないだろうが!

何考えてんだ俺! 最低だ。







最低だ……くっそ……





















































































まるで疫病神がとり憑いているかのようだ。

災いは常に海藤に降り注ぐ。







これ以上、あいつに何を失わせる気なんだよ。神様よ――























































彼は今、気を失っている。

包帯は巻いているけれど、酷い顔になっているから、覚悟するようにと言われた。













確かに酷い火傷を負っていたけれど、特にショックではなかった。

それが海藤だと認識出来なかった、だけかも知れない。

いや、海藤だ。













この人は、海藤聖一なんだよな。







































































































































































































そうか













俺の声が海藤に届かなかった理由は……













どうすればよかった?

私に何か出来た?







「考えていること」が分かっても、「どんな気持ち」か分からなければ、

こんな能力、意味が無い。













海藤先輩が不登校になる直前も……













何もかも手遅れだったんだ……















1年経って、病院が変わったとのことだった。













中学を卒業した今でも若園さんとは連絡を取り合っている。

というか、彼女から俺に近付いている節がある。







彼女の考えてることはよくわからない。

こういう時だけ俺も心読む能力欲しいなあ……。





































たどり着いた先は、町外れにある建物。










中も全然……








































その人は、ササウラと名乗った。

こわそうな人だ……。













……なんだ…………













現実逃避ってやつ?

新しい世界で生きているのなら……それでいいよな?













楽々浦さんは、研究者としてここにいる。

(表では医者として仕事をすると言っているようだ)







なんの研究をしているのか、そのために何故海藤が使われるのか。

海藤は一体どうなってしまうのか……

全部は教えてくれなかった。













彼の目には今、何が映っているんだろう?































違うところへ行ってしまったのは、俺だった。

けど










何か聞こえて目が覚めた。







やっぱり、夢じゃ、ない……?









人格を、返す?







こいつ一体……










影は怪しい笑みを浮かべた。

俺がこう答えることが、わかっていたかのように。













そして俺は、その言葉に突き動かされる――













俺は海藤に何をしようとしている?



















あれ?
海藤って前からこんな感じだったっけ……?







妙に明るいような気がするけど、気のせい?



























世界の行き来を繰り返して1年、現実世界の海藤はいまだにボケーッとしていて

俺の言葉は相変わらず届かないままだった。



















正直心が折れそう。

















でも、”彼”を救えるのは俺しかいないんだと思ってる。

























ついに「頭が可笑しい」とまで言われた。

死んだ人間を蘇らせるようなものだと。




……だって。

海藤はこっちの世界に戻ってくる必要が無い。

つらいだけだから。

だったらあの人を引きずり出したほうが、みんな幸せになるだろう。







何も悪いことはしていない。むしろ、俺は救世主なのだ。彼の、彼らの。













ていうか。

頭が可笑しい人だと思うなら、俺と付き合うのやめればいいのに。

君のほうが、よほどわけがわからない。













「今の私より自暴自棄になっているかも知れない。

問題なく明るいヤツだったとしても、ほっといてあげてください。」







冗談めいて、こう言った。













若園さん。

友達でも恋人でもない若園さん。

若園さんと俺ってどういう関係なんだろうな。













おひさ! って軽すぎだろ……!

1年待ったぞこの野郎!



















やっぱり彼女は海藤のことを知らなくて、

そして海藤も……











































俺に心を読む力があれば、

海藤が今言ったことの意味が、わかったはずだった。

































ある日



















その間に佐藤さんともやりとりしたりして、わかったことが、いくつか。


やっぱり現実のソレとは違って、彼の見る世界は全くの別物。


この部屋から動けない彼は、ここを「喫茶店」と呼んでいた。
RECOVERYという名前までハッキリしているらしい。
楽々浦先生ら研究員に似た店員さんがいるようだ。






そんな喫茶店は現実世界に存在しないのだが。
























これは……










君がつけていたものを、預かってたんだ。


























































後日

そろそろいいかと思って、渡してみた。










本来、君が知っているはずの彼女だ。













それにしては嬉しそうじゃないのがヘンだと思った。













君はもしかして、他に好きな人が出来たのか……?

だとしたら、誰?







その答えが分からないまま、次の異変が起きた。







ますますこの世界がわからなくなってくる。































とか言ってみて。







君は、この世界にいなくてはならない人間なんだ。

全ては君のために。君の弟のために。







俺はただの、引き立て役。





































かなり参っている様子だったので、外に出してやりたいと思った。



















彼にとって今ここは、どこなのだろうか。

自分の中では歩いているつもりなんだろうか。

俺と並んで……。



















なんのことだかとおどけてくれたらよかったのに

君はまるで海藤のように真剣な顔をするんだ……
















突然早口で喋りだして何がなんだかわからなくなってきた。

海藤が佐藤さんで佐藤さんは海藤の、え? ん?







ああそうだ、影も言っていた。







彼がハッキリ覚えているのは







この身体が海藤聖一のものであるということだけ。







でもちゃんと人格は、あったじゃないか……

じゃあ……その人格は……




























そうだ……俺は救世主だ。




俺はただ佐藤さんの人格を現実世界に返すことだけを考え

そのために、海藤をここに残すために、居場所を作ったつもりだ。




今度一緒に遊ぶ予定もしてた……




でもきっとそれだけでは帰れないんだ……







そもそもこの別世界が一体なんなのかわかってない。

根本な部分が……













能力が覚醒? この俺の、氷のことか?

何が言いたい……?













……なん……

なんだって…………?





















































































……ま……負けた……













海藤の容態はひとまずよくなって、夏休みになった頃にまた会いに行った。

夏休み前に、今日ぐらいに遊ぶ約束をしていたんだけど、大丈夫だろうか。













たまには昇と佐藤さんっていう恋人としてじゃなくて、

登竜と海藤っていう友達として遊びたかった。







>







まともにゲームも楽しめないんだろうか。

誰とでもこういう感じなんだろうか。







……誰とでも?

海藤ってちゃんと友達いるのかな……







どうでも、いいけど……













誰の支えもなく独りで死ぬのか。俺のことなんかどうでもいいんだな。

……そうふっかけようと思ったが、言葉に詰まった。













え?













……なんてかわいそうなヤツ。



















ご飯を食べることになって、

「こうして副会長と食事をするのは滅多になかったことですね」

なんて相手は言いながら、カルボナーラを食べている。

確かに外食は初めてかもしれない。

普段は生徒会室で弁当を食べるものだから、あまり意識していなかった。













正直、生徒会にすんなりついてきてくるとは思ってなかったので

誘った俺は当時けっこうビックリしたんだぞ。













ずっと不思議だった。













考えたこともなかったけど、

そう考えないとツジツマが合わないんだよ。





































そして、以前に約束していたあの日になった。

俺の誕生日……8月25日に、彼とデートをするという約束だ。

……俺と佐藤さんは、水族館へきた。































それから、ここから海は近いらしく、そっちまで移動した。

俺、さっきから迷子なんだけど……そこは佐藤さんについて行って、

アイスを買った。







なんだか複雑な気持ちだけど……佐藤さんは嬉しそうだったからいいんだ。

君が嬉しそうにしているとすごく安心する。







また君の容態が悪くなってしまったらすごくつらいから、

明日の君がどうなっているのかは俺にはわからないから、

今日みたいな日がずっと続けばいいのにと思う。













佐藤さんも、似たような考えを持っていたらしい。













恥ずかしそうに、しかし真っ直ぐにそう言った。

俺を愛したいと言ってくれた。







けれどその凛々しさや声色がどことなく




……いや、どう考えても海藤聖一のものであることを理解したくはなかった。

姿が海藤だから……というだけの問題ではない。間違いなく彼は……




彼はまだ、自分は海藤聖一だと勘違いしているんだろう。







彼は佐藤さんだ。

佐藤望だ。

そう言い聞かせる。




君は佐藤さんだよ。




今の君は愛しい愛しい俺の恋人なんだ。







だから今の告白も、君からの言葉だと、そう言い聞かせる。













って、君が認識している家って……













心の準備できてないよ……!































君は、こんな俺を快く受け入れてくれた。

























始めからあの人はいなかった。













自称完璧主義者で暑苦しくてめんどくさいこんなやつのことを

俺は、ずっと、ずっと……

























そして今も、気を遣っている。

君は、言葉を選んでいる。













え?













こうして身体を交わらせても、距離がまだある。

いつになったらゴールになるのか、一体なにがゴールなのか




海藤はいつ目を覚ましてくれるのか、誰にもわからない。


































夏休みが終わり、文化祭の準備が始まろうとしていたところに













思わぬ「影」が現れる。













う、「うちの友くん?」

なんのことだ? それより……













そっくりだったものだから……













…………それって、夏休みより前だぞ。













なんなんだ、こいつ。













その謎の男による復讐は、文化祭に決行された——



















文化祭の準備が順調に進む中でも俺は不安だった。

海藤の様子も可笑しかったし、何よりあの金目の男が気がかりで。













ヤツが何をしようとしていたのかまるで想像できなかった。

想像できなかったことを、悔やむ。























































文化祭の当日、一番起きてほしくないことが、起きてしまった。

























現在Mr.Gamerの更新はここまでです。次回を乞うご期待!

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